【本編4】片麻痺治療の”質”とは?:3つのアプローチ

 そもそも”片麻痺治療”とは?

 脳卒中片麻痺の治療と聞いて、どんなことを思い浮かべるでしょうか? ほとんどは、学生時代に実習で教わったこと、職場で教えてもらっていることを思い浮かべると思います。

 私の場合、入職当時は、職場の脳卒中片麻痺の治療といえば、ボバースが中心でした。実習で教わったような、単純にストレッチと筋力訓練して、座位→立位→歩行と行っていく伝統的な方法と違って、大きな戸惑いを覚えました。ただ、片麻痺を治療するということはこういうことなのかと、理解し実践できるように努めました。

 ただ、一方で、その頃の時代の流れとして、当時の学会や勉強会では、ボバースを中心とした神経筋促通手技に対する懐疑的な視点も出てきており、”ボバースでは何が足りないのか?””ボバースの後には、何が来るのか?”といったことが考えられ始めていた時期でした。

 そして、脳卒中ガイドラインもできたことも相まって、Carr&Shepherdの課題指向型アプローチも拡がり始め、ADL訓練中心のリハビリへ進んでいた時期でもありました。また、認知運動療法も着実にセラピストの心を掴んでもいました。

 現在、片麻痺治療の方法としては、大きく3つに分けられます。課題指向型アプローチ(長下肢装具)とボバースと認知運動療法の3つです。今回は具体的な方法については少し置いておいて、まず、片麻痺治療の”質”を考える時に、何を”質”と考えるか、について考えていきたいと思います。

 【本編2】リハビリの治療の効果に必要なことは?:質 × 量 × 知識

 では片麻痺治療の”質”とは?

 片麻痺治療の”質”とは何かと考えた時に、2つの方向性があります。1つ目は、”麻痺肢を良くするか?”、2つ目は”ADL能力を早急に向上させるか?”です。どちらを質と捉えるかで、大きく方向性が変わってきます。

 リハビリの業界としては、ここの考え方がまとまらないので、【本編1】で書いたように、どのアプローチが正解ということは示していません。

 【本編1】リハビリ編集室:臨床にこだわるセラピストのためのブログ

 

 2つの方向性を考える時に、”麻痺肢を良くするか?”であればボバースと認知運動療法、”ADL能力を早急に向上させるか?”であれば課題指向型アプローチ(長下肢装具やCI療法)、という分け方ができます。

 ただ、2つの方向性は、一見、違う方向を向いているように見えますが、全体として捉えた時には矛盾しません。それは、機能と能力は相関するからですが、また別の機会に書きます。

 まとめると、片麻痺の治療の”質”を考えた時に、2つの方向性があり、その方向性によって治療法が違ってくるということ。さらには、実際にの臨床では、患者さんの状態や在院期間によって、どちらの方向性を優先させるのか違ってくるので、片方だけでなく2つの方向性の理解が必要になるということです。

 3つのアプローチを理解することがまず必要

 2つの方向性の理解するということは、その治療法の代表例である3つのアプローチ、つまり、課題指向型アプローチ(長下肢装具)とボバースと認知運動療法を理解することがまず必要になります。

 実際の臨床において、一番大切なのは、目の前の患者さんを治療していくことです。そのために、臨床において実践されてきた3つのアプローチ、それも、それらの本質を理解することです。

 イメージとしては、

  単なる ”課題指向型アプローチ × ボバース × 認知運動療法” ではなく、

 ”課題指向型アプローチの本質 × ボバースの本質 ×  認知運動療法の本質” です。

これは、前回書いた”編集的な視点”が必要になってきます。次回からは、3つのアプローチについての臨床的な考察をしていきます。

 【本3】なぜリハビリに”編集”が必要なのか?

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