片麻痺のリハビリの治療の”質”とは何か?
前回まで、片麻痺のリハビリにおける治療の”基本方針”について書いてきました。今後、臨床での具体的な片麻痺の治療について書いていく予定ですが、その前に、もう一度、基本的なことを確認していきます。
【本編19】片麻痺のリハビリにおける治療の”基本方針”のまとめ
患者さんに対しての”片麻痺の治療の質を上げていくこと”がセラピストには求められますが、果たして、この”質”とは何を指しているのでしょうか。
この片麻痺の治療の”質”とは、”麻痺側の機能を上げる”ことです。私たちは、実際の臨床では、麻痺側の治療をし、麻痺側の機能を上げる目的でリハビリを行っていきます。
ただ、もちろん、”ADLの能力を上げなければならない”という側面もあるので、麻痺側の機能を上げても、実際の能力訓練の場面でその機能が使われないと意味がない。
ですので、より正確に言うと、”麻痺側の機能を上げ、実際の能力に組み込む”ことが実際のリハビリの目的になります。
(*機能が上がると能力も上がるというのは、【本編10】でも書きました。)
【本編10】片麻痺治療の”機能訓練と能力訓練”の関係を理解する
麻痺側の機能の向上とは?
では、麻痺側の機能を上げるとは、どういうことかというと、【本編17の補足②】で書いたように、”痙性を抑制すること”と”随意運動を向上させること”です。
【本編17の補足②】痙性とは何か?錐体路障害で起こることは何か?
もっとシンプルに言い換えると、”思い通りに力を抜くことができ、思い通りに動かせるようになること”です。
”力を抜く”必要がある状況では力を抜き、”力を入れる”必要がある状況では力を入れ、目的の動作を行う。この当たり前のようなことを、一つ一つできるようにしていく必要が出てきます。
麻痺側の機能を能力に組み込む
ただ、麻痺側の機能を上げてから、実際の能力で使っていく必要があるので、麻痺側の機能に合わせた能力訓練を実施していくことを行います。
”麻痺側の機能を上げ、実際の能力に組み込む”と表現しましたが、なぜ組み込まないといけないかというと、麻痺側は非麻痺側と比較して、圧倒的に使われにくいので、麻痺側を意識的に使っていく必要があります。そうしなければ、すぐに非麻痺側中心の動作になってしまいます。
使いやすい方を使うのが効率的なので、”利き手”と”非利き手”であれば利き手を使うように、どうしても利き手(=非麻痺側)を使いたくなる心理と同じと考えていいでしょう。
そして、麻痺側の機能を実際の能力に組み込むということは、”麻痺側の機能に対する体幹のバランス反応を獲得して実際の能力を可能にする”、と言い換えることもできます。専門的な言葉でいうと、”麻痺側の運動レベルに応じた姿勢制御を獲得していくこと”、になります。
”麻痺側機能を上げる”ということは、麻痺側上下肢の機能を上げることだけでなく、体幹の機能を上げることも含まれます。具体的には、①痙性のコントロールと随意性の向上、と②麻痺側の機能に応じた姿勢制御の向上、の2つが、具体的な臨床での片麻痺の治療の目的になります。
まとめ
臨床での片麻痺の治療の目的は、”麻痺側の機能を上げること”です。そして、その麻痺側の機能が能力面に生かされないと意味がないので、”麻痺側の機能を上げ、能力に組み込む”ことが実際のリハビリの目的になります。
それは、麻痺側の上下肢の機能とそれに伴う体幹のバランス向上を意味するので、つまり、片麻痺のリハビリの質が高いということは、”麻痺側の上下肢・体幹の機能向上ができている”ということになります。
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