【本編25】片麻痺リハビリの治療はどうするか?:臥位【上肢機能】

 実際の動作で使う上肢の動きから機能訓練を考える

 基本的な考え方は、【本編24】・【本編24の補足】の下肢の時と同様の考え方で、治療を進めます。

 【本編24】片麻痺リハビリの治療はどうするか?:臥位【下肢機能】

 【本編24の補足】片麻痺リハビリの治療はどうするか?:臥位【下肢機能】②

 治療の中での ”麻痺肢をどのように触れて、どのように動かすか”といった基本的な流れは、【本編21】で書いた流れで行います。

 【本編21】セラピストは、片麻痺をどのように触れ、どのように動かすか?

 また、治療の目的は、【本編20】で書いたように、”随意性の向上と痙性のコントロール”です。

 【本編20】片麻痺リハビリの治療の”質”とは?:実際の臨床で何を目的にリハビリしていくか?

 では、まず”上肢の機能訓練で何を行うか”について確認しておきます。”上肢の機能訓練は、実際の動作のときに、より上手く使えるようになるため”に行います。または、”実際の動作の時に、より麻痺肢を参加させるため”とも言えます。

 そのため、実際の動作の時に使う動きを、機能訓練として行う必要があります。つまり、実際の動作のための機能訓練ということです。

 上肢の動きも、下肢の動きと同様に無数にありますが、実際の動作を想定することで、動きを限局することができます。

 では、臥位での実際の動作はどのような動作かというと、”手をどこに置くか、どこに触れようとするか”の動きです。そして、上肢に関しては、下肢と異なり、”身体へ向かう動き”と”外部環境へ向かう動き”の2つに分けることができます。接触面(上肢:手掌面、下肢:足底面)が身体に向かう動きは、下肢にはありません。

 

 臥位での具体的な機能訓練:身体へ向かう動きと外部環境へ向かう動き

 では、、”身体へ向かう動き”と”外部環境へ向かう動き”の2つに分けた時に、臥位の中で、実際の動作にはどのような動きがあり、具体的にどのような機能訓練になるでしょうか?

○身体へ向かう動き

 ・手を胸やお腹に置く

 ・お腹や胸をさする

 ・手を口元に持っていく

○外部環境へ向かう動き

 ・ベッド面を触る

 ・ベッド柵を掴む

 

◎臥位での具体的な機能訓練

 ・手掌面を身体に向けた状態での、胸部と腹部との肘関節屈伸運動

  ・腹部と麻痺側殿部(側面)との肘関節屈伸運動

  ・殿部とベッド面との肘関節屈伸運動

  ・手掌面をベッド面に向けた状態での、肘伸展位での肩関節外転運動

  ・手掌部を身体面に向けた状態での、肘伸展位での肩関節屈曲運動

  

  ・手掌部が胸部から(=身体から)離れるような肩関節外旋運動

  ・手指が天井方向へ向いた状態(内外旋中間位)での肩関節屈伸運動

  ・胸部から口元への肩・肘関節屈伸運動

 下肢同様に、上肢の無数の動きを、実際の運動で限局すると言いましたが、結果として、全ての肩関節の動きを使うことになります。

 

 機能訓練は、他動的な運動と自動的な運動で行う

 機能訓練は、他動運動ー自動介助運動ー自動運動(ー抵抗運動)の順で行いますが、基本的には、痙性コントロールを目的とした”他動的な運動”と、随意性向上を目的とした”自動的な運動”、の2つに分けることができます。

 患者さんが今行う運動の感覚を知ることがまず必要なので、まず”他動的な運動”から始め、”自動的な運動”に移行するのがよいです。また、学習のため、回数を重ねる必要があります。

 実際の臥位での上肢機能訓練としては、上記の具体的な運動を”他動的な運動”と”自動的な運動”で、繰り返し行っていくことになります。

 

 最終的には実際の動作で確認する

 機能訓練後は、実際の動作で麻痺側上肢が上手く使えているか、上手く参加できているかを確認する必要があります。

 実際に、”手を胸やお腹に置く”、”お腹や胸をさする”、”手を口元に持っていく”、”ベッド面を触る”、”ベッド柵を掴む”を行ってもらいます。また、動作を繰り返し行う中で定着させることも必要になるでしょう。

 実際の動作のための機能訓練ですが、機能訓練で終わらないように、機能訓練後に実際の動作を確認し、動作訓練を行っていきます。

 

 まとめ

 機能訓練は、実際の動作から考えて行います。臥位での運動は、”手をどこに置くか、どこに触れようとするか”の動きです。そして、機能訓練は、痙性コントロールと随意性向上を目的に、他動的な運動と自動的な運動を行い、回数を重ねることで学習させます。

 最後に、実際の動作を行って、どの程度麻痺側上肢が上手く使えているかを確認します。

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