混同しがちな概念は分けて、関係性を理解する
【本編16~18】の中で、片麻痺のリハビリにおける治療の”基本方針”を書いてきました。
【本編18】運動学習:意識的な学習と無意識的な学習(片麻痺治療の基本方針③)
基本方針は、実際にリハビリの治療する前に、概念として、”分けて”考えておくべきことです。ここを混同してしまったり、分けて考えることができなかったりすると、治療の精度を高めることはできません。
”分けるべきことは分けて、関係性を理解する”、ことが大切です。
1つ目:機能訓練と能力訓練の関係性
機能と能力の関係性は、”中身(=機能)と箱(=能力)”で例えられるように、機能の集まりによって能力が出来上がります。
なので、訓練としては、機能訓練がどの能力訓練に繋がっているのかを考えながら治療すべきです。つまり、能力訓練時に問題となっていることを改善させるために、機能訓練を行うということです。
例えば、歩行の立脚中期の不安定さを改善するために、股関節内外転の機能訓練を行うとか、上肢のリーチの際の上肢の不安定さを改善させるために、肩関節屈曲や肘関節伸展の機能訓練を行う、とかです。
2つ目:上下肢と体幹の関係性
上下肢と体幹の関係性は、”役割”で分けて考えます。上下肢の役割は、操作のように”動作の目的を達成する”ことで、体幹の役割は、”姿勢を保つ”ことです。
【本編18の補足④】姿勢制御(=定位)について:バランス反応
なので、訓練を、”上下肢の随意的なコントロールの訓練”と”体幹のバランスの訓練”に分けて考えることができます。
また、上下肢と体幹の”神経学的な違い”や”脳のメカニズム”の違いも理解することは、予後予測を考える上でも大切です。
3つ目:意識的な学習と無意識的な学習の関係性
いわゆる、一般的な学習は、”意識的”なものです。そのため、何か新しいことを学習するためには、”意識的に”行う必要があります。
しかし、運動の学習を考えた時に、ヒトは、支持基底面の上に重心を保つ事が無意識的に起こるため、無意識的にそのようにバランスをとる事でその姿勢を学習してしまいます。
【本編18の補足④】姿勢制御(=定位)について:バランス反応
なので、”バランス反応で起きる無意識的な運動の学習”と、”何か新しい運動を意識的に学習すること”、は分けて考えることができます。リハビリの訓練においても、無意識的な学習が起こることを想定しながら新しい運動の学習をさせていく必要があります。
そして、意識的に学習していく上では、課題を、”適切な難易度”に設定し、”回数を重ねていく”ことが大切です。適切な難易度=課題の質だとすると、回数を重ねる=課題の量になり、課題には”質と量”が大切ということになります。
【本編18】運動学習:意識的な学習と無意識的な学習(片麻痺治療の基本方針③)
今後の内容
分けて考えるべき概念として、3つの基本方針を書いていきました。今後は、”実際の治療の目的→実際の方法”という流れで書いていきます。患者さんを目の前にした場面で、何を目的に、どのようにするか、について臨床的な視点で書いていきます。
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