【本編11】課題指向型アプローチ(長下肢装具)とボバースを両立させるには?

 課題指向型アプローチとボバースの”相性”は?

 臨床的に、課題指向型アプローチとボバースの”相性”はどうでしょうか? ADLの動作訓練を中心とする”課題指向型アプローチ”と、丁寧に筋の反応を確かめながらハンドリングする”ボバース”を、臨床的にどう考えればいいでしょうか。

 結論から言うと、2つの相性は、”合わなそうで合います”。それはなぜか?。前回の【本編10】の”機能と能力”の関係を思い出してもらいたいです。

 【本編10】”機能訓練と能力訓練”の関係を理解する

 機能は”箱の中身”で、能力は”箱”と考えるとイメージしやすいですが、課題指向型アプローチも、ボバースも、最終的には動作訓練を設定します。共通した箱(=能力)を設定しています

 例えば、寝返り、起き上がり、立ち上がり、歩行等の動作訓練が一致しています。動作の際のセラピストの”介助”を、課題指向型アプローチ的に捉えるか、ボバース的に”ハンドリング”として捉えるかの違いはあれど、訓練として一致していることは相性がいい。

 日本神経理学療法学会の方向性が、ボバース~課題指向型アプローチ・長下肢装具になっているのも、頷けます。また、日本ボバース研究会の伊藤克浩会長が勉強会で、長下肢装具を取り入れていると言っていたのも理解できます。

 

 課題指向型アプローチとボバースの”共通点と違う点”は

 では、少し具体的に、2つのアプローチにおける共通点と違う点を考えていきます。

 ◯共通点:

 ・動作訓練が一致。なので、治療の段階的な進め方が同じ。

 ・機能へのアプローチとして、体幹機能への比重が大きい。

 ◯違う点:

 ・機能訓練として、課題指向型は非麻痺側中心であるのに対して、ボバースは麻痺側中心に考える。

 ・機能訓練の際、課題指向型は痙性ネガティブに捉えないのに対して、ボバースはネガティブに捉える

 ・ボバースはハンドリングを大切にして筋の反応を見るに対して、課題指向型はそこは重要視しないで動作時の介助の程度と捉える。

 ・課題指向型は患者に目的を教えて治療での積極的な参加を促すのに対し、ボバースはハンドリングに対する無意識の追従を促す。

  【本編5】課題指向型アプローチ(長下肢装具)を臨床から考える

  【本編6】ボバースを臨床から考える

 両立させるために何を議論すればいいか?

 では、課題指向型アプローチとボバースの両立をさせるには、どうすればいいでしょうか?全体としての方向性は一致しているものの、細部での違いは多くあります。特に、麻痺側上下肢の機能についてどう捉えるか?が議論になるでしょう。

 ・麻痺側上下肢の痙性をどう捉えるか?

 →絶対にダメなこととして考えるのか、それとも、ある程度許容しながら動作訓練を進めるのか。

 ・麻痺側の機能訓練はどうするのか?

 →麻痺側上下肢に積極的に関わるのか、それとも、能力訓練の中で使用する程度にするのか?

 ・患者さんへの課題に対する関わり方はどうするのか?

 →積極的に参加してもらうのか、無意識のままか。つまり、どこに注意をさせるのか?

 →”学習”をどう定義するか。

 これらの議論をすることによって、両立は可能でしょう。一見、全く合わなそうな2つのアプローチですが、臨床的に、相性はいいです。

 次回の【本編】は、”ボバースと認知運動療法”について比較していきます。

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