片麻痺の評価項目は多くあるが、何を評価するか?
前回、前々回では、実際に片麻痺の患者さんの身体を、”どのように触れて、どのように動かすか”、そして、”どのように筋力訓練をするか”、について書きました。
【本編21】セラピストは、片麻痺をどのように触れ、どのように動かすか?
ただ、実際は、すべての片麻痺の患者さんが同じように順調に、”他動運動→自動介助運動→自動運動→抵抗運動”と進めていける訳ではありません。片麻痺の症状は様々なので、その様々な症状に合わせたリハビリの進め方を考えなければなりません。
様々な症状を知るために、まずその患者さんの”評価”をしなければならないということです。同じ治療の流れにあったとしても、患者さんによって進み方が違うので、その違いを評価して知らなければなりません。”評価と治療”は、両方があって成立するものなので、切り離されることはありません。
では、脳卒中片麻痺の評価項目は多くありますが、何を評価する必要があるでしょうか。評価する対象自体が多く、同じ評価対象でも異なる評価方法がある場合もあります。そして、機能の評価、能力の評価(=アウトカム)にも分かれます。
もちろん、学生時代のように、意識レベル、麻痺の程度、表在・深部感覚、脳神経、高次脳機能、動作分析など、全て事細かに評価して、全体を知ることは大切です。しかし、実際の臨床では、評価に多くの時間は取れないですし、評価と治療を分けて考えずに、治療する中で評価して、さらに治療を進めていきます。
麻痺肢を、動かしていく中で評価して、治療していくということです。治療によってどのように変化したか、変化した場合はどのように次進めていくか、が中心になります。
つまり、”治療にとって必要な評価”が、治療するために必要になります。そして、評価と治療が連動して考えていけるように、評価を”シンプルにカテゴリーに分ける”ことも重要です。
運動機能、感覚機能、高次脳機能の3つを評価
そのカテゴリー分けは、運動機能、感覚機能、高次脳機能の3つの評価です。この3つの視点に分けて治療を考えると、評価と治療を連動させて考えることができるようになります。
○運動機能は、麻痺の程度(Brunnstrom stage:Br.stage)のことです。つまり、”どのくらい自分で動かせるか”。
○感覚機能は、表在感覚と深部感覚のことです。つまり、”どのくらい動きを感じ取れるか”。
○高次脳機能は、大まかに言えば、右脳の損傷か、左脳の損傷か(=左半側空間無視があるか、失語症があるか)。細かく分ければ、注意機能・記憶機能・判断機能・言語機能等の認知機能のことです。つまり、”どのくらい課題に取り組めるか”。
”どのくらい自分で動かせるか”、”どのくらい感じ取れるか”、”どのくらい課題に取り組めるか”、の3つの評価が、治療を進める上で非常に大切です。それはなぜか。
”学習をさせること”、が治療の目的だからです。学習は、”【本編19】片麻痺のリハビリにおける治療の基本方針”でも書きましたが、”片麻痺の治療=麻痺側の学習”のことです。
【本編19】片麻痺のリハビリにおける治療の”基本方針”のまとめ
結局は、学習できるかどうかを評価する
結局、何のために評価するかというと、”治療によって学習できるかどうか(=予後予測)”、”どのくらい学習できているか(=結果)”、を知るために評価をするということです。
”学習のための評価”が、基本的な評価の軸になります
もちろん、臨床症状を確認するための評価という位置付けでの評価も必要ですが、そのような評価は、片麻痺では多くありすぎます。ここは、”片麻痺の学習のための評価”、に視点を限定して考えていくべきです。
セラピストの頭がいっぱいでは治療はできません。片麻痺の患者さんが学習していくために、適切な難易度の課題を提供し、適切な介助と適切な声がけで学習を進めていく必要があります。そのために”学習”というシンプルな評価の視点に定めることが必要です。
まとめ
片麻痺の評価項目は多くありますが、治療のためには、”片麻痺の学習のための評価”をするべきです。
それは、どのくらい自分で動かせるか(=運動機能)、どのくらい感じ取れるか(=感覚機能)、どのくらい課題に取り組めるか(=高次脳機能)、の3つの評価に分けて考える必要があります。
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