姿勢制御とは、重心を支持基底面に入れること
【本編18】において、無意識的に起こる運動は、姿勢制御(=姿勢を保つ、バランスをとる)だということを書きました。
【本編18】運動学習:意識的な学習と無意識的な学習(片麻痺治療の基本方針③)
”姿勢制御=バランスをとって姿勢を保つ”ということを、もう一度確認しておきます。”バランスをとって姿勢を保つ”、ということは、すごくシンプルに言うと、”重心が支持基底面にある”ということです。
身体では、”重心が支持基底面にある”ことを保つために、以下のような無意識的な戦略が取られます。
①支持基底面内に重心を保つために、正しいアライメントでの姿勢保持が優先される訳ではなく、より安定したアライメントで姿勢を保とうとします。
②そして、重心が支持基底面から外れていこうとすると、それを防ぐように、”筋力を発揮して保持しようとしたり”、”身体の形を変えたり”して、姿勢を保とうとします。
③それでも、重心が支持基底面から外れていく場合は、支持基底面を変化させます。手を伸ばしたり、下肢をステップしたりして、支持基底面を変化させます。
つまり、身体は、無意識的に、この姿勢を保つということを行います。では、この姿勢制御は、何のために起きるのでしょうか?
姿勢制御は、目的の動作を達成するため
姿勢を保つのは、”目的の動作を達成するため”です。動作には何かの目的があって、それをスムーズに遂行するために、”姿勢を保つ”ということが起こります。
もし、目的を達成するために、バランスを崩して身体を怪我したら、元も子もありません。身体を守るために姿勢制御はおきますが、大切なのは、何かの動作を達成することです。
”動作の目的を達成すること”と”姿勢を保つということ”は、身体で同時に起きていることであり、両方が成立して、動作が遂行されるのです。この2つが”1つの行為”に含まれます。
これは当たり前のことのように感じますが、リハビリの治療を考える上では大切です。
動作の目的を達成して、姿勢バランスを崩してはダメだし、姿勢は安定しているが目的が達成できないのでは意味がない。つまり、目標物に手は届いても、バランス崩して転倒してはダメだし、バランスは保てても、目標物に届かなければ意味がない。
(*姿勢保持を、支持基底面を変化させるかさせないかで、静的な姿勢保持、動的な姿勢保持という分け方もできますが、共通することは、”動作の目的を達成させる”ために重心を支持基底面内いれて”姿勢を保つ”、ということです。)
動作における上肢・下肢と体幹の役割
また、”動作の目的を達成すること”と”姿勢を保つということ”は、身体部位で分けることができます。分かりやすい分け方は、”動作の目的を達成することは上肢・下肢”で、”姿勢を保つということは体幹で”、主に行っているということができます。
より正確に言うと、身体の末梢部で”動作の目的を達成”し、身体の中枢部で”姿勢を保つ”と、言えるでしょう。末梢部の役割は、外部環境との相互作用で、中枢部の役割は身体内部の定位です。
上肢の場合は、手での操作という目的に対して、中枢部はバランスを保つ。下肢の場合は、足底面からの床反力をうまく受け取ったり離したりするという目的に対して、中枢部はバランスを保つ。
末梢部は”外部環境に対する身体の外的な働きかけ”に対し、中枢部は”身体に対する内的な働きかけ”、ということもできます。
リハビリの治療の際に、末梢部・中枢部という身体の役割の違いを知っておく必要があります。
まとめ
姿勢を保つということは、重心を支持基底面に入れるということです。そして、姿勢を保つということに対して、動作の目的を達成するということが、1つの行為に含まれています。
また、それは、上肢・下肢と体幹、正確には、末梢部と中枢部の役割の違いと言うことができます。この2つの役割を知って、リハビリの治療を介入する必要があります。
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