運動学習とは意識的なもの
学習は、当然、意識して行った結果によって起こるものです。リハビリだけでなく、一般的な事柄に関しても、それは当てはまります。ある課題に対して、繰り返し練習することによって、その課題をスムーズに行えるようになる。もしくは、意識しなくてもできるようになる。
それは、勉強でもそうですし、スポーツに関しても当てはまります。ある課題に対する処理速度が速くなる、もしくは、考えなくてもできるようになる。
”運動学習”、つまり、”運動を学習できた”とは、運動を意識的に訓練した結果として無意識的に運動ができるようになる、と言い換えることができます。
したがって、”運動学習”といった時に、”意識的に”行うというのが一般的です。患者さんが意識的に行うことによってしか、学習は進まない。これは、片麻痺の患者さんにも当てはまる大前提です。
意識的な学習と無意識的な学習
では、学習とは意識的に行うこと、という大前提はありながら、無意識的な学習はないのか?ということも考えてみたいと思います。
勉強で考えた時に、無意識に勉強ができるようになっていくことはありません。スポーツに関しても、練習せずにうまくなっていくことはありません。ただ、ある一つの動作を考えた時に、無意識的に起こっている運動があります。それは何でしょうか?
それは、バランスをとるということです。臨床的な言葉で言えば、”姿勢制御”ということです。これは、無意識的に起こります。私たちは、重心を支持基底面内に入れるという反応が備わっています。このバランス反応は、無意識の内に出現し、結果的に学習します。
例えば、下肢の機能が低下した時に、体幹がうまく代償的にバランスをとって学習することはあります。これは、意識して、体幹を側屈させたりしている訳ではなく、重心をコントロールするために無意識的に起きています。
なので、運動に関しては、意識して行ったものだけが学習するかというと、厳密にはそうではないです。意識的な運動学習と、結果的に学習される無意識的な運動学習がある。バランスをとることは無意識的に行われ学習してしまいます。
ただ、無意識的に学習されてしまうことも、意識的に学習することによってしか修正ができません。それでは、次は、意識的に学習することについて考えていきたいと思います。
学習とは①:実際に運動したことしか良くならない
では、”意識的に学習する”運動学習というところに戻って考えると、実際に運動したものしか良くならないということ、があります。これは、自然回復とは区別してください。
そして、実際に運動したものしか良くならないけれども、学習するためには、適切な難易度を段階的に進めていく必要があります。適切な難易度の課題とは、発達の最近接領域の発想で行うことです。つまり、一人でできることと手助けを借りてできることの間の領域のことです。
もっとシンプルに言うと、”易しい課題から難しい課題へ”という当たり前のことです。逆に言うと、できないことをやらせてはいけないという意味です。
ただ、この”易しいから難しいへ”、の具体的な分け方の視点は多くあります。多くの視点を組み合わせなければいけません。それに関しては、今後書きたいと思います。
学習とは②:回数を重ねる必要がある
上の難易度の調整という要素と、もう一つ大きな要素があります。それは、回数を重ねなければならないということです。つまり、繰り返しが必要ということです。これは非常にシンプルなルールで、量を行う必要があるということです。
まとめ
まとめると、運動学習とは、”患者さんが意識的に行うもの”であり、例外としてバランスをとるということがあります。そして、学習に関しては、”適切な難易度の課題”に対して、”回数を重ねていくこと”で学習が進みます。
コメント