痙性とは?
痙性はネガティブなものなので、リハビリにて治療しなければならないと前回の【本編17の補足】で書きました。
【本編17の補足】痙性をどう考えるか:ネガティブか、ポジティブか
では、痙性とは何か?ということも確認しておきたいと思います。痙性の分類の仕方は、認知運動療法での分け方が分かりやすいです。
認知運動療法では、痙性を4つに分けています。①伸張反射、②連合反応、③共同運動、④運動単位の動員異常、の4つです。一般的に、痙性という言葉は、痙縮を考えがちですが、これら4つに分けて考えることができます。
それでは、上記では、痙性を4つに分けましたが、今度は逆に、4つの共通する部分を考えてみるとどうなるでしょうか。これらの4つの運動は、”自分ではコントロールしていない運動”と言うことができます。つまり、”不随意的な運動”ということです。
”痙性とは不随意的な運動”、ということができます。
痙性は錐体路障害によって出現します。とすると、錐体路が障害されることによって、起こる病態が明確になってくるはずです。
錐体路障害で起こることは?
錐体路が障害されることによって、”随意的な運動する機能が低下し、痙性=不随的な運動が出現する”、と考えることができます。これは、教科書的にいうと、陰性兆候と陽性兆候のことです。
錐体路障害で起こることは、”随意運動の低下”と”不随意運動の出現”、の2つです。当たり前のことに感じると思いますが、非常に大切です。それはなぜか。リハビリの治療に関わるからです。
錐体路障害の治療では何をする必要があるのか?
片麻痺の患者さんをイメージした時に、パッと思い浮かぶことは何でしょうか?その言葉通り、”麻痺”なのではないでしょうか。”随意運動の低下”に目がいきやすいのではないでしょうか。
錐体路障害で、随意運動低下と不随意運動出現の2つが起きているにも関わらず、なぜ、随意運動低下に目がいきやすいのかというと、理由があります。それは、発症後の”機能解離”の現象によります。
脳卒中の急性期では、損傷直後の機能解離の現象により、痙性はすぐには出現しないので、随意運動の低下が目立ってしまい、片麻痺の病態を印象付けてしまいがちです。そのため、その後のリハビリの治療も、随意運動の向上、つまり、”いかに出力を出すか、アウトプットさせるか”の運動の出力に対する治療が中心となりやすくなってしまいます。
しかし、実際は、錐体路障害によって随意運動低下と不随意運動の出現が起きます。なので、リハビリの治療も、運動を出力するだけでなく、”不随意運動をコントロールすること”も同じくらい大切です。
そもそも、不随意運動をコントロールした状態でなければ、随意運動をスムーズに起こすことは困難です。
片麻痺の治療をする際には、しっかりと病態に目を向けることが大切です。
まとめ
片麻痺、つまり、錐体路障害の病態は、”麻痺と痙性”、つまり、”随意運動の低下と不随意運動の出現”です。リハビリの治療は、麻痺と痙性の2つへのアプローチが不可欠です。
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